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1 倒産とは

(3)倒産の予防策

会社倒産後の再建、清算という話をする前に、倒産の一般的な予防策について、若干述べることとします。
会社やその経営者は、たとえある程度の収益を計上している現状であっても、以下のような視点を忘れることなく、倒産状況を事前に回避できるよう、会社活動の継続につとめていくことが必要です。
(イ) 収益の向上
会社の収益を向上させるためには、収入(売り上げ)を増加させること、すなわち、取引量の増加及び取引単価の増加を目指すことが単純明快です。
新規の商品や新規サービスの開発、既存の取引先との関係の強化により、取引量を増加させ、また旧商品、旧サービスに付加価値を付け、類似商品、類似サービスとの違いを際立たせることで、取引単価の増加を目指します。
言葉で書くと単純かつ抽象的なものですが、会社経営者は自社の商品やサービスの特徴を十分に把握した上で、市場の動向や流行を調べ、競業他社の提供する商品やサービスの内容についても常に敏感であることが求められます。
このような経営努力をする会社と、そこそこの利益をあげている現状に満足しているだけの会社とでは、おのずと倒産に対するリスクが異なってくることは明らかでしょう。
(ロ) コストの削減
収入が増加したとしても、それに伴いコストが増大するのでは、会社の収益は一向に改善しません。逆に収入が減少しても、それ以上のコスト削減が実現できるのならば会社の収益は向上するのです。
収入をいかに残すかというコスト削減という視点も、収入をいかに増やすかという視点と同様、会社の体力を大きく左右します。不測の事態で収入が途絶えてしまった場合には、コスト率が高い会社ほど、負債が累積するスピードも速くなるのです。
コストは物的コスト(生産、製造費用、仕入費用、流通費用等)と人的コスト(従業員の賃金等)に分類できます。
物的コストの削減は、生産、製造工程のスリム化、原材料の大量仕入れや価格交渉、流通ルートのスリム化などによって実現されますが、これらを行うに際しても会社経営者が自社の商品やサービスの特徴と、それにいたるコストの内訳を十分に把握した上で、他の取りうる手段や代替コストについてたえず敏感であるということが求められます。
人的コストの削減は、従業員の賃金の見直しやリストラによって実現することになります。しかし、物的コストの削減と異なり、人的コストの削減は、従業員の労働意欲を低下させ、会社の求心力の低下という事態を招く可能性が大きいので慎重に対応することが必要になります。
そして、人的コストの削減を行う場合であっても、その手続や内容は労働関係諸法や就業規則という規範に沿うものでなければなりません。例えば、合理的な理由がない解雇は判例上制限されていますし、退職金の支払いや解雇予告手当の支払いが必要になる場合もあります。これらの場合には、人的コストの削減を行なう際に一定程度の金銭を準備しておくことが必要になります。
(ハ) 会社組織の見直し
会社の不採算部門を廃業したり、会社分割や事業譲渡による切り離しによって、会社の事業を収益が期待できる分野に縮小し、倒産の芽を事前に摘み取るという方法もあります。
会社組織の見直しを行うにあたっては、その方式によって会社法の規定を遵守することが必要となります。例えば株式会社において事業譲渡を行う際には、原則として株主総会での特別決議を経なければならないという制約が存在します。この場合は、事前に株主に対して十分な説明を行った上で、その理解、内諾を得ておくことが必要になります。
(ニ) 資金の調達
会社が存続していく上で、運転資金は常に確保されていなければなりません。
手形の決済資金が欠ければ、銀行取引停止処分のリスクが現実化します。従業員の賃金の未払いや滞納が発生すれば、従業員のやる気、会社の求心力が低下するとともに、そのような事実の発覚によって、会社に対する悪評やマイナスイメージが世間にさらされるという危険も生じます。取引先に対する未払い、滞納があった場合もこれと同じで、取引を打ち切られてしまっては、会社にとって致命傷になり得ます。
資金の調達は、会社における内部留保、銀行あるいは公的機関からの融資という方法が普遍的ですが、増資(新株発行)や社債発行を行うことによっても可能となります。
ただし、社債を引き受けてもらうためには、その会社が経営、信用において秀でていることが必要でしょうし、増資を引き受けてもらうためには、出資をしようとする者から見て、将来的な会社の成長や業積の拡大が見込めるということが大前提になります。