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1 会社更生

(4)手続の概要

(イ) 更生手続開始の申立て
会社更生手続は申立てにより開始します。申立権者は当該株式会社、当該株式会社の資本金の額の10分の1以上に当たる債権を有する債権者、及び当該株式会社の総株主の議決権の10分の1以上を有する株主です(会社更生法第17条第2項)。申立てをすることができるのは、以下のいずれかに該当する事実がある場合です。
  • 破産手続開始の原因となる事実(債務超過、支払不能)が生ずるおそれがある場合(同条第1項第1号)。
  • 弁済期にある債務を弁済すれば、その事業の継続に著しい支障を来すおそれがある場合(同項第2号)。
申立ては書面で行う必要があり、書面に記載すべき事項、添付すべき書類は規則で定められています(会社更生規則第11条ないし第13条)。
会社更生手続開始の申立てをすべき裁判所は、株式会社の主たる営業所の所在地または本店の所在地を管轄する地方裁判所のほか、東京地方裁判所、大阪地方裁判所は常にその管轄を有するなど、管轄を拡大する規定が設けられています(会社更生法第5条)。
(ロ) 保全管理人の選任、保全処分
会社更生手続開始を申立てても、開始決定が出されるまでは数ヶ月を要します。よって、この間の会社の財産状態を、申立時のまま維持する必要があることから、通常、会社更生手続開始の申立てと同時に保全処分の申し立てをし、裁判所は保全管理人を選任します(会社更生法第30条)。保全管理人が選任されると、更生手続開始決定がなされるまでの間、会社財産の管理処分権は、保全管理人に委ねられます(会社更生法第32条)。
(ハ) 更生手続開始の決定、更生管財人の選任
上記(イ)に述べた会社更生手続開始の原因が認められない場合の他、予納金を納付しないとき、すでに裁判所に破産手続等他の法的倒産処理手続が継続しており、当該手続によることが債権者の利益に適合するとき、事業の継続を内容とする更生計画の認可の見込がないとき、不当な目的で申立てがなされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき等は、会社更生手続開始の申立てが棄却されます(会社更生法第41条第1項)。これら以外の場合には、会社更生手続開始の決定がなされます。
裁判所は、更生手続開始の決定と同時に、一人又は数人の更生管財人を選任します。また、更生債権等の届出をすべき期間及び更生債権の調査をするための期間(一般調査期間)を定めます(会社更生法第42条)。
(ニ) 更生債権の届出
債権者は、前項で決定された債権届出期間内に債権を届け出なければなりません(会社更生法第138条)。届出のなかった債権は、その責に帰する事ができない事由によって1ヶ月の期間延長が認められる場合(会社更生法第139条)を除き、失権します。
(ホ) 更生債権の調査
更生管財人は、債権届出期間内に届出があった更生債権・更生担保権の内容及び議決権についての認否を記載した認否書を作成します(会社更生法第146条)。
届出債権者等及び株主は、一般調査期間内に、裁判所に対し、認否書に記載された更生債権、更生担保権の内容について、書面で異議を述べることができます(会社更生法第147条第1項)。
(ヘ) 更生債権等の確定のための裁判手続
認否書において更生管財人が認め、かつ一般調査期間内に異議がなかった債権は、その内容及び議決権の額が確定します(会社更生法第150条第1項)。
他方、更生管財人が認めなかった更生債権・更生担保権または届出債権者等若しくは株主から異議が出た更生債権・更生担保権については、当該更生債権・更生担保権を有する更生債権者・更生担保権者は、一般調査期間の末日から1ヶ月以内に更生裁判所に更生債権、更生担保権の額等についての査定を申立てます(会社更生法第151条第1項、第2項)。
この申立てを受けた裁判所は、更生債権の存否及び額等を査定する裁判をし(同条第3項)、裁判書を当事者に送達します(同条第5項)。
査定の裁判に不服がある者は、裁判書の送達の日から1ヶ月以内に、異議の訴えを提起することができます(会社更生法第152条)。
このように、権利の存否やその性質、数額等に争いのある更生債権、更生担保権について、通常の訴訟手続よりも簡易、迅速な確定手続が設けられています。
(ト) 財産目録等の作成・提出
更生管財人は、更生手続開始決定後遅滞なく、更生会社に属する一切の財産につき、更生手続開始時における時価に基づき、その価額を評定します(会社更生法第83条第1項、第2項)。また、この評定を完了したときは、直ちに更生手続開始の時における貸借対照表及び財産目録を作成し、これらを裁判所に提出します(同条第3項)。
(チ) 否認権の行使
会社が倒産状態に陥ると、会社が故意に自らの財産を減少させたり、特定の債権者に対して、債権者間の公平を害するような担保の提供や弁済を行ったりすることがあります。
そこで、更生管財人は、更生会社が更生手続開始決定の前になした財産の処分行為であっても、債務者の財産を減少させる行為(財産減少行為)や、既存の債務についてされた担保の供与または債務の消滅に関する行為(偏頗行為)について、その法的効力を否定することができます。これを「否認権の行使」といいます(会社更生法第86条ないし第98条)。
この否認権は、訴え、否認の請求又は抗弁によって、更生管財人が行使します(会社更生法第95条)。否認の請求とは、更生裁判所が、否認の請求の原因たる事実(否認の要件)についての疎明により、簡易に否認の可否を判断する制度です。
なお、この否認権の内容、行使方法については、民事再生、破産の場合も同様の手続が定められています。
(リ) 役員の責任追及
会社の倒産の場面では、会社の役員に善管注意義務違反などが認められ、当該役員が会社に対して損害賠償責任を負うことが少なくありません。
そこで、会社更生法では、他の倒産法制(民事再生法、破産法)と同様に、裁判所は、会社更生手続開始前及び開始後において、役員の財産の保全処分をすることができると規定しています(会社更生法第40条、第99条)。
また、会社更生手続開始決定があった場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、更生管財人の申立てまたは職権により、役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判をすることができます(会社更生法第100条)。この裁判が確定すると、給付を命ずる確定判決と同一の効力を有する(会社更生法第103条)ため、更生管財人が強制執行などの方法によってこの債権を取り立てて、更生会社の財産に組み入れることが可能になります。
なお、実務上は、会社の債務を役員個人が保証していることが多く、この保証債務を履行させることで、実質的に役員としての責任を果たさせるケースも少なくありません。
(ヌ) 第一回関係人集会
関係人集会とは、更生管財人、更生会社、届出をした更生債権者等、株主及び更生会社の事業の更生のために債務を負担し又は担保を提供する者があるときはその者が参加する集会を言います。
第一回目の関係人集会として、通常、更生手続開始決定後2か月以内に、財産状況報告集会が開かれます(会社更生規則第25条第4項)。
財産状況報告集会において、更生管財人は、更生手続に至った事情、会社の業務及び財産に関する経過及び現状など、更生手続において必要な事項を報告します(会社更生法第84条第1項、第85条第1項)。
(ル) 更生計画認可前の事業譲渡
更生手続開始後更生計画認可前においても、更生管財人は、裁判所の許可を得て、事業の譲渡をすることができます(会社更生法第46条)。
会社の再建のためには、価値のある事業と不採算の事業を見極め、譲渡する事業については少しでも価値の高いうちに譲渡することが重要です。ところが、更生計画の認可を待っていては、事業の価値の低下を避けられない場合があります。そこで、平成15年の会社更生法改正において、更生計画認可前でも事業譲渡をなしえることが明文化されました。
(ヲ) 担保権の消滅請求
会社の重要な財産に担保権が設定されている場合等、更生会社の再生のために担保権を消滅させることが必要であると認められる場合、裁判所は、更生管財人の申立てにより、当該財産の価額に相当する金銭を納付させることにより、当該財産におけるすべての担保権を消滅させることを許可することができます(会社更生法第104条第1項)。この決定に対しては、担保権者の異議申立手続である即時抗告の制度(同条第5項)、担保権者からの目的物の価額決定の請求の制度(会社更生法第105条)が設けられています。
(ワ) 更生計画案の作成、提出
更生管財人は、会社の財産の調査、債権内容の調査、各債権者の意向聴取、事業計画の検討を繰り返しながら、会社再建の青写真である更生計画案を作成し、裁判所に提出します。
このように更生計画案の作成までには様々な調整が必要であることから、従来は更生計画案の提出までに数年を要することも少なくなく、このことが会社更生手続に時間がかかる原因の一つとなっていました。
しかし、平成15年の会社更生法改正により、更生計画案の提出期限は、会社更生手続開始決定の日から1年以内の日に定められることとなりました(会社更生法第184条第1項、第3項)。ただし、この提出期限は、申立てにより又は職権で、期間を伸長することができます(同条第4項)。
(カ) 第二回関係人集会、更生計画案の決議
更生管財人が更生計画案を提出すると、この更生計画案に対する決議のための関係者集会が開催されます。
更生計画案に対する決議は、更生会社に対して有する権利の種類ごとに組を作り、各組において、当該権利に対する計画案の内容について決議を実施する方法で行われます。各組における可決の要件は以下のとおりです(会社更生法第196条)。
  • 更生債権者の組
    更生債権者の議決権額(=債権額)の総額の2分の1を超える同意
  • 更生担保権者の組
    (a) 更生担保権の期限の猶予を定める計画案可決の場合
      …更生担保権者の議決権額の総額の3分の2以上の同意
    (b) 更生担保権の減免等を定める計画案可決の場合
      …更生担保権者の議決権額の総額の4分の3以上の同意
    (c) 事業の全部廃止を内容とする清算を定める計画案可決の場合
      …更生担保権者の議決権額の総額の10分の9以上の同意
  • 株主の組
    更生会社の総議決権の過半数の同意
更生計画案が否決されると、裁判所は、続行期日を定めるか(会社更生法第198条)、会社更生手続を廃止して(会社更生法第236条第3号)、破産手続に移行することになります。
(ヨ) 更生計画の認可
更生計画案が可決されると、裁判所は、会社更生法第199条第2項の要件に合致していることを確認して、更生計画に対する認可決定をします。この認可によって更生計画は法的効力を生じ、債務は更生計画のとおりに減縮され、その後は更生計画に従った弁済が行われます。
(タ) 更生手続の終結
裁判所は、更生計画において認められた債務の弁済が終了したとき、またはその3分の2以上の額が弁済され、更生計画が遂行されないおそれがあると認める場合でないときは、更生手続終結の決定をします。