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1 会社更生

(6)税務上の課題

更生計画の認可の決定がされると、その時点で管財人により行われていた財産評定額が確定します。この確定した評定額と決算書上の簿価との差額は、「評定差損益」として会計上の収益又は費用として計上され、また、法人税法でも下記(イ)のような特別の取扱いをします。
また、取引金融機関等からの債務免除額は、債務免除益として会計上、税務上ともに収益として認識されるため、多額の債務免除益が生じた場合などには、当然に法人税等の負担も生じることとなります。
債務免除が行われると、将来返済すべき債務は減少しますが、追加の資金援助を受けるというものではないため、会社のキャッシュに変動は生じません。このような状況で債務免除益による多額の法人税負担が発生してしまうと、せっかく更生計画の認可を受けたとしても税負担により資金繰りが悪化し、事業計画が頓挫してしまうことになりかねません。
そこで、税務では、このような特殊な状況にある法人に対して(ロ)のような特例を設けています。
(イ) 財産評定損益の税務上の取扱い
法人税法では、資産の評価替えによる評価損益の計上は原則として認められていません。しかし、会社更生の場合、財産評定の結果により会計上評価替えが強制されることとなりますので、法人税法でも特例として、更生計画認可の決定に伴う評価損益はその事業年度の益金の額及び損金の額に算入することとされています。
なお、この場合の評価益と評価損の取扱いは若干異なり、評価益については、すべての資産について認められますが、評価損は棚卸資産、固定資産、有価証券及び繰延資産のみに認められるため、預貯金、貸付金及び売掛金等については、例え財産評定の結果評価替えが行われたとしても、税務上の評価損としては認められないので注意が必要です。
(ロ) 繰越欠損金の取扱い
更生計画認可の決定があった場合には、通常多額の債務免除益が計上されます。
更生計画を実施する会社は税務上の欠損金を抱えていることが予想されますが、法人税法では過去7年分(平成13年4月1日前に開始された事業年度において生じた欠損金は5年分)の繰越しか認められていないため、それ以前にいくら多額の欠損金が生じている場合においても、この債務免除益が7年分の繰越欠損金額を超えているときには、その超えた部分につき法人税が課税されることとなってしまいます。
そこで更生会社における控除可能な欠損金の額については、一般の法人とは異なる特殊な規定(特例欠損金)を認め、債務免除益等の計上による税額発生を防ぐ措置をとっています。
具体的には更生計画認可の決定に伴って発生する債務免除益、財産評定による評価替え益(財産評定による評価替え損と相殺したネット金額まで)及び役員や株主等から受ける私財提供益の合計額を限度に、過去に生じた欠損金額のすべて(法人税申告書 別表五(一)「利益積立金額の計算に関する明細書」の翌期首現在利益積立金額の合計額)を控除することが可能となります。
更生手続を行う場合には、その決定により生ずると予測される債務免除益等の収益と、控除することが出来る欠損金額を検討し、キャッシュフローを悪化させるような納税負担が発生しないようにタックスプランニングをする必要があります。
(ハ) 同族会社の留保金課税
同族会社の留保金課税とは、株主と社長が同一人物であるようなオーナー会社において、通常の上場会社のように獲得した利益を株主に配当せず、会社内に留保して株主個人の税負担を減少させるという行為を抑制するための法人税法の規定で、一定額以上の利益を会社内部に留保した場合には、その部分に対して追加で税金を課すという制度です。
具体的には、持株比率の最も高い株主グループの保有している株式が、その会社の発行済株式の50%超を占めるような会社の場合に、通常の法人税の他にその事業年度に発生した利益金額のうち社外流出(配当や役員賞与など)しなかった金額のうち一定額以上の部分に対して10~20%の税率で追加課税を行うというものです。
ここで注意しなければいけないのは、発生した利益金額とは欠損金の控除を行う前の金額であるということです。つまり、多額の債務免除益等をせっかく特例欠損金の制度をもって相殺したとしても、留保金課税の対象にはなってしまうため、本来の法人税は0円、留保金課税のみ多額に発生するという事態が生じるケースがあります。
留保金課税の税率は、通常の法人税率に比べて低く、また一定の控除制度があるというものの、やはり経営再建中の会社には重くのしかかる負担となりますので、事前のタックスプランニングが重要となってきます。